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ワイン総合研究所   渡辺  正澄
 

 雪のちらつく札幌市内の立派な鮨店へ行った時、店主は、ワインと魚介料理の相性にたいへん興味をもっているという。外気の寒さと違って、地下にあるこの鮨店は快適な温度だ。店主のお薦めに従って、まずは新鮮な水ダコの刺身を味わう。これと辛口でタンニン少なめなシャルドネと合せたところ、こんな別嬪見“タコ”とない。タコもだんだん美人に見えてくる。それにレモン汁に塩を溶かしたたれがピッタリだ。コショウもワサビもいらない。このレモン汁・塩だけのたれは、甘エビ(ボタンエビ)のような小エビで、甘味(グリコ−ゲン)があり油分がない場合でも同じである。
 
もし、上記のシャルドネではなく、トロピカル・フル−ツの香りのする辛口のソ−ヴィニオン・ブランなら、料理にバジルか大葉(青しそ)を添えて、ワインの香りに負けないようにすると、風味豊かな新しい味わいが楽しめるだろう。

  水ダコとマダコ

 水ダコは、寒帯性で北太平洋の沿岸にすむ。マダコに較べて水っぽくて味が劣るという説もあるが、それはウソ。こんなに旨いタコはない。が、料理に多く使われるタコの代表株は、やはりマダコである。
 マダコは世界の 熱帯・温帯海域に分布している。日本ではマダコは本州以南に住む。3メ−トルにもなる水ダコに比べれば、マダコは体長60センチぐらいまでだ。瀬戸内海が産額からいえば中心。特に明石や岡山で食べるマダコは、美味だ。関東では油壺あたりの海から獲れるマダコが旨い。最近(2009年)では、日本で消費されるタコの約70パ−セントが、アフリカ産である。

タコの鮮度

タコはグリコ−ゲンが多いだけでなく、タウリンも多い。このタウリンは、カキやイカにも多いが、血圧降下作用や肝臓の機能を改善する。さらにタウリンは抗酸化力があるので、タコは鮮度の良い状態で冷凍保存が長く効く。それに加えて新鮮なタコは、油分もない冷旨系食材。それゆえ、タコは、単にレモン・塩を振るだけで旨味が増し、上記のようにタンニン(渋み)が少ない辛口の冷旨系白ワイン(ブルガリア・ワインであればユニーク・シャルドネなど)と良く合う。この場合、料理の酸味とワインの酸味が一致していることが大事である。

  梅肉とみりん

 関西方面では、たれに梅肉を良く使う。梅肉はクエン酸の外にポリフェノ−ル(タンニン=渋味)が多量にある(www.kasuikyo.jp/text/16-3.html)中間系調味料なので、これをマダコの刺身につけて味わうときは、辛口でややタンニン多めの中間系白ワインと合せやすい。
 
例えば、いくらか樽熟した辛口白や、タンニンのやや多い辛口ロゼ−などだ。さらに梅肉にみりんなどの甘味を加えたソ−ス(たれ)なら、甘口ロゼ−にする。つまりソ−スを仲介に、酸味と甘味を一致させる。また同時に“甘味は渋味(タンニン)を隠す”という相性の原則で、梅肉の渋味も、“隠される。

  タコ(マダコ)を食べる地中海沿岸諸国と黒海沿岸のブルガリア

 タコ(以下、主にマダコ)は、地中海沿岸諸国のギリシャ、イタリア、フランス、スペイン、ポルトガルなどやブルガリアの黒海沿岸やソフィアでも食べられている。調理方法も、サラダ、炭火焼き、煮るなど、いろいろある。それにワイン、香味野菜、ヴィネガ−やレモン汁なども料理に加えたりする。日本でも、醤油や味噌、塩、みりん、日本酒、米酢、黒酢、ゆず、すだち、黒糖、大葉、みつば、木の芽(さんしょう)などを使った様々なレシピ−で調理した独特の風味のタコ料理がある。

   ギリシャやスペインのタコのサラダとブルガリア・ワインとの相性

 ここでは、ギリシャとスペインの代表的なサラダと、それを応用したサラダとブルガリア・ワインの相性に焦点を合わせてみよう。
 エ−ゲ海にあるギリシャのサントリニ−島を訪ねた時、島の魚介レストランで、大皿に、タコやキュウリなどの乱切り(1.5〜2.0 cm)と、小粒トマト、塩・コショウ、オレガノ、レモン汁、白ワイン・ヴィネガ−、オリ−ブ油などを混ぜたサラダを賞味した。

   タコとホワイト・マブルッド

 先日、拙所の調理室でこのサラダを作った。さらにこのサラダとブルガリアのさわやかなリンゴ酸とタンニンがややあるホワイト・マブルッドと合わせて相性を楽しんだ。するとこのサラダの中のタコは、ホワイト・マブルッドにピタ・ピタと合い、夢かと思うようなおいしさに、気持ちがなごんだ。

   ヨ−グルトの効果

 またさらに、このサラダに乳酸の酸味のあるヨ−グルドを少し混ぜてみると、“ブルガリア風タコのヨ−グルドサラダ”に変身! ブルガリア産の樽でアルコ−ル発酵とマロラチック発酵(乳酸発酵)させた白ワインのビラ・メルニック・ベルグ−レと、ピタ・ピタと合ったから楽しくなった。

   タコのガリシア風サラダ

 ところで、スペインのマドリッドでのタコ料理の食べ方は、まったくギリシャとは異なったスタイルだ。 泊まったホテルの案内係から「タコのガリシア風サラダがある」と、教わった“タベルナ(居酒屋)”に、自称”ワイン鑑定一座“の仲間の藤原正雄氏と出かけた。そこはタパスという、つまみ料理を、テ−ブルの小皿に入れて並べた景気のいい立ち食い居酒屋だった。様々なタパス料理の一つに、お目当てのタコ料理があった。そのタコは、スペイン北西部のビゴの漁港から送られてきたものだという。
 この「タコのガリシア風」は、まずタコ(マダコ)を十分ほど軽く茹でてから、足を刺身にして皿にきれいに盛る。その刺身には、スペインで”アホウ“と呼んでいるニンニク、それにピリットするピメント(赤とうがらし)、塩、レモン汁、オリ−ブ油やパセリのみじん切りが振りかけてあった。   

   タコと赤ワイン

 居酒屋の亭主は、はるばる日本からかけつけて、タコをさかなに討論している“ワイン鑑定一座”をねぎらってか、グラスに赤ワインを注いだ。そして、「セニョ−ル・ハポン!タコの研究かね。“ゴ タコ ウ”を祈る!」なんていう顔つきをした。
 さて、この赤ワインは、どうやらこのタコ料理に合うことがわかった。ニンニクとピメントは、タコのグリコ−ゲンをマスキング(被服)しながら、温旨系赤ワイン中の乳酸やタンニンと、ほどよく合ってくれたのであろう。
 しかしその合い方は、塩・レモン汁のたれと辛口白の冷旨系ワインの合い方に比べて、せいぜい七〇パ−セント程度だ。とにかくスペインでは、赤ワインは、白ワインよりも生産量が多い。しかも赤ワインを白より好む人が多いようだ。

   相性を高める方法

 だが、上記の相性をもっと高める方法は二つある。一つは、この料理に赤ワインのタンニンと相性のよいピメントかニンニクを、もっと加えるか、冷蔵庫で冷凍濃縮(糖分二十五パ−セント以上)したオレンジ汁で赤ワインの渋味を隠してもよい。

   鴨のオレンジ煮込みの甘味は、赤ワインのタンニン(渋味)を隠す

 例えば、ボルド−の高級赤ワインと鴨のシチュウを合せる場合、名物料理の「鴨のオレンジ煮込み」がある。 オレンジの甘味は樽熟成したタンニンの渋味をマスキング(被服)する。ここでも、“甘味は渋味を隠す”という原則が適用されている。その外に、オレンジ汁の代わりにバルサミコ酢を使う手もある。タコのサラダの色彩を気にしなければ、これも可能だ。

   ブルガリアの赤と

 タコのガリシア風サラダを、ブルガリアの赤ワインで合すなら、EM.エドアルド・カベルネ・フランがおいしい。この赤ワインには、優雅な香りとやわらかなタンニンがあって飲みやすい。 さらに、ヨ−グルド少々ほか、薬味(ニンニク、ピメント)の匙加減で、赤ワイン全般に合いやすくなる。
 
タウリンの多いタコやタンニン(ポリフェノ−ル)が多い赤ワインの相性の共演は、健康の上でも役立つ。♪タコ、タコあがれ天まで〜♪・いえ、♪タコ・タコ召しあがれ、ワインまで召しあがれ〜♪
皆様も、こんな合せ方で、人生を一層楽しく過ごされては如何でしょうか。

 

文献:1. (渡辺正澄+藤原正雄著:ワイン常識がガラリと変わる本、講談社α文庫)。
   
:2. ja.wikipedia.org/wiki/マダコ



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