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ワイン総合研究所   渡辺  正澄
  (7)ブルガリアのぶどう品種 
    ◆ブルガリアの在来種
 (ガムザ : 赤品種)

ガムザは、古くからブルガリア北部で栽培されている。ハンガリー、スロバキア、フランス、ルーマニア、ユーゴスラビア、オーストリア、トルコでは“カダルカ(Kadarka)”と呼ばれている。 最近まで北部で栽培されていた基本的な品種だった。 ガムザのぶどうの収穫期は9月下旬から10月初旬で、熟期はやや遅い。収穫期の糖分は、19〜22%以上に達する。秋の天候が、乾燥して暖かい年は、この赤ワインは、かなり濃いルビー色になる。4〜5年の熟成で風味は向上する。

 (マブルッド : 赤品種)

マブルッドは、古くからブルガリアだけで栽培されている赤品種である。このぶどうは、パザルディク(Pazardjik)地区、スタラ・ザゴラ地区、プロヴディフ地区などで多く栽培されている。
マブルッドは、やや晩熟のぶどうで、プロブディフ地域では10月初旬に熟す。冬の気温があまり下がらない温暖な気候を好み、また沖積土壌が最も栽培に適している。
マブルッドは、ブルガリアの在来品種として、最も高貴な赤ワインになる。その香りや風味は、フランスはロ−ヌの品種シラ−に似ている。このワインの色調は深いルビー色で、豊かな酸味と心地よいタンニンが十分あり、香りにブラック・ベリーのような心地よい風味がある。さらにオ−ク材で樽熟成させると、ボルド−のポムロ−ル地区のような香りの複雑な高貴な風味になる。

 (ミスケト・シェルヴァン : 白品種)

この品種は、古くからブルガリアで栽培されている。これは主に、サブバルカン渓谷(sub-Balkan Valley)、スレドラ・ゴ−ラ(Sredna Gora)、サングラレ・ヴァレ−(Sungurlare Valley,)カルロヴォ(Karlovo),などでも栽培されている。在来品種の中では、最も霜に強い品種で、また多くの外国品種よりも寒さに強い。ぶどうの果皮は薄い赤色だが、ワインの色調は麦わら黄色で、調和のとれた味と心地よい風味の白ワインとなる。 ディミアトやイタリアン・リ−スリングなどとブレンダされた有名な白の辛口ワイン(ユキシノグラ−ド(Euxinograd)の銘柄ワインが造られている。

 (パミド : 赤品種)

このぶどうは、古代トラキア時代から栽培されている非常に古い品種である。かっては、ブルガリアで最も広く栽培されていた。今日での栽培は、非常に限られている。 また、かってのユーゴスラビア共和国、また、アルバニア、トルコ、ギリシャ、ハンガリー、ルーマニアなどで栽培されている。
パミドは、樹勢が強い中期熟成種で、収穫期は、9月中旬頃である。このぶどうから得られる最高品質のワインは、日当たりのよい丘陵地から得られる。
このブドウから得られたワインは、酸味が少ないので長期熟成には適さず、新鮮なうちに消費に適した軽い赤ワインである。

 シロカル メンシュカル・オザ : メルニーク産赤品種)

ブルガリア南西部のメルニク(Melnik)地区のみで古来から栽培されてきた地方品種である。 ブラゴエヴグラト地区のサンダンスキ、メルニク、ペトリッチなどの町の周辺に限定されている。 このぶどうは、四季を通じて温暖で、特に暑い夏と長い秋に適した品種である。ぶどうの収穫期は、10月初旬である。ワインの色調は、ブラック・チェリ−のような濃いルビ−で、若い中に味わっても美味しく、酸味も十分で風味は大変よい。さらに樽熟成により、豊かで複雑な風味になる。

国際品種

ブルガリアには、上記のブルガリア古来の在来品種以外に、国際的な品種がある。

 (カベルネ・ソーヴィニヨン : 赤品種)

これは、フランスはボルド−の有名な5品種の一つの高級品種で、ブルガリでのこのぶどうの栽培は拡大中である。なお世界のブドウ畑の約10パーセントは、この品種である。 現在、カリフォルニア、チリ、オーストラリア、ニュージーランドなどでも普及している。このぶどうの収穫期は、温暖地では9月下旬頃に熟す。ブラックベリーや桑の実などの香りがあり、色調は濃い赤紫色のガ−ネットである。 ワインの酸もタンニンも豊かで力強く、オーク樽で熟成させると、チョコレート、シナモンス、スパイス、コショ−、バニラなどの混ざった素晴らしい芳香を放つ。オ−ク樽で熟成1年ほど熟成させて瓶詰して室温におくと、10年経過する頃から、素晴らしい円熟した優雅(ヒネス)で高貴な風味に変わる。

 メルロ− : 赤品種

この品種も、カベルネ・ソーヴィニヨンと同様に、ボルド−の5品種の一つである。世界中のワイン生産国で栽培されているが、ブルガリアでも、その栽培面積は、広がっている。ぶどうの収穫期は、カベルネ・ソーヴィニヨンよりも早い9月中旬である。 カベルネ・ソーヴィニヨンも酸味もタンニンも穏やかだが、オーク材による樽熟成で、ブル−ッベリ−やトリフのような芳香が高まる。カベルネ・フランと同様に樽熟後、瓶詰した場合、6年くらいで穏やかで優雅な芳香を放ち、風味も調和のとれた高級ワインになる。

 ムスカト・オットネル : 白品種

このマスカット香の甘い香りのするぶどうは、ワインだけでなく、生食用としても、利用されている。栽培地域は、バルカン諸国、モルダヴィア、アルザス、オ−ストリア、ドイツなどである。 収穫期は、8月下旬から9月前半である。このマスカット系のワインは、東欧では甘く、西欧では辛口になる傾向がある。ワインは、マスカット香やバラの花の様な香があり、ブルガリは、やや甘口から甘口までの新鮮なワインが主に造られている。

 ピノ・ノワール : 赤品種

このぶどうは、ブルゴーニュ、シャンパーニュ、アルザスなどを中心に広がっている。高品質のワインが多くブルガリアやカリフォルニアでも栽培されている。 ブルガリアでは、主にスリブエン地区を中心に栽培されている。 このワインは、他の品種とブレンドされることは、スパ−クリングワイン以外に少ない。 色調は、明るい赤紫のルビー色で、ブラック・チェリ−、ラズベリーのニュアンスがあり、オーク材で熟成させると、豊かで複雑な優雅な味わいと余韻がある。

 シャルドネ : 白品種)

もともとは、ブルゴーニュやシャンパンで栽培されていた品種で、現在では、世界各国で栽培されている。最近では、カリフォルニア、オーストラリア、チリ、アルゼンチンなどでも栽培されている人気品種である。 ブルゴ−ニュでは、コルトン、シャブリ、モンラッシェなどの高級酒があるが、シャンパン製造の場合にも重要品種である。ブルガリアでは、プロヴィディフ地区や北東部で栽培されている。 ブルガリアでのぶどうの収穫時期は、プロヴディフ区のような暑い地域では、9月の中旬頃に、北東部では、9月の下旬頃になる。  

 トラミナー : 白品種

この品種の起源はオーストリアでの南チロルである。この辛口ワインは、ドイツ、アルザス、フランスなどで栽培されている。ブルガリアでは北東ブルガリアで、少量だが栽培されている。 このぶどうの収穫期は、9月中旬頃である。 冬の低温には強いが、干ばつの影響を受けやすい。 この辛口白ワインは、スパイシイの香りとバラの花の様な香りがあり、 調和のとれた新鮮な風味がある。

 ソーヴィニヨン・ブラン : 白品種)

この品種の故郷は、フランスの南西部の大西洋沿岸、ボルド−のソ−テルン、グラ−ヴ、アントレ?ド?メールである。このワインはブルガリアにもあり、新鮮で辛口白の極上な素晴らしい風味がある。収穫期は9月中旬である。このワインの極甘口は、ボルド−のソーテルン(貴腐ワイン)が有名。なお、ソ−テルンやグラ−ヴには、この辛口もあり、トロピカル・フル−ツの心地よい香りと風味がある。さらに、オ−ストラリアやニュ−ジランドにも辛口で、フランスに劣らない品質のものがある。

 ユニ・ブラン : 白品種)

この品種は、フランスのコニャック(ブランディ)用品種だが、ブルガリアでもポモリエとブルガス地区で栽培されて、ブランディ(ラキア)や、新鮮で柔らかい風味の辛口白ワインが造られている。 収穫期は9月下旬から10月中旬になる。

 :高級ワインの醸造方法と香りの特徴について

☆ シャルドネのような白ワインは、ぶどうの果梗と果皮は除いて、果汁のみをアルコ−ル発酵させる。この発酵後の澱(オリ)をワインと共に数か月の間接触させる(シュ−ル・リ−)と、澱の中の酵母は自己消化(オ−トリ−ゼ)して、多量のアミノ酸をワイン中に放出する。このアミノ酸は、乳酸菌の栄養になるが、乳酸菌はさらにワイン中のリンゴ酸を乳酸に変える。乳酸菌がリンゴ酸を乳酸に変える発酵を、マロラクチック発酵と呼んでいる。一方、酵母や乳酸菌が完全に澱の中で自己消化すると、含硫アミノ酸(システンやシスタイン)をワイン中に放出する。この含硫アミノ酸は、さらに分子量の少ない硫黄系成分に分解する。この分解成分とワイン中のエチルアルコ−ルが反応すると、硫黄系有機化合物の:ジエチルサルファイドのような超新鮮な香気成分が発生する。これが、いわゆるテイステイング用語で”ミネラル“と呼んでいる成分である。 さらにオ−ク材で樽熟成させると、ミネラル香は減少するが、樽から抽出されたタンニン由来の香気成分などが加わった、バニラ、トロピカルフル−ツ、メロン、梨、丁子、ココアなど香りのニュ−アンスのある複雑で優雅な風味になる。 またワイン中の有機酸(リンゴ酸、乳酸、酒石酸)とモノ・エステルがワインの熟成中に反応して、高貴な香りの有機酸ジエチル・エステル類になり、いわゆる”ヒネス“と呼ばれる最上級の芳香が増加してゆく。

☆ 以上のような複雑な醸造工程の風味の向上は、赤のカベルネ・ソウヴィニヨン、メルロ−、ピノ・ノワ−ルでも、ほぼ同様である。但し赤ワインでは、収獲ぶどうの房は、果梗を除いて、果皮と果汁を共に発酵させる。果皮由来のポリフェノ−ルが加わることにより、白よりも赤ワインの熟成期間は長く続く。そして、赤い果実の香り(カシス:ブル−・ベリ−)やトリフ、イチジク、タバコ、バニラなどの香りが混ざった高貴な風味に向上してゆく。                                      

文献 1.日本ソムリエ協会 教本: P.390〜394, 2011..   
2. www.bulgarianvillarenters.com/...bulgaria/wine-bulgar                            
3. en.wikipedia.org/wiki/Bulgarian_wine 


<渡辺 正澄 プロフィール>

農学博士(京大)、ワイン総合研究所 代表取締役社長、ワインマスター研究会 代表。
山梨大学工学部応用化学科卒。ドイツ・スペイン国際学会等でワインと料理の相性や醸造学などの学術研究を発表。著名な日本のエノロジストの一人として評価される。
国際ワイン醸造経営協会日本理事、社団法人 日本ソムリエ協会名誉ソムリエ。
1978年、日本醸造協会技術賞 受賞。著書に「ワインと料理の相性ピタ・ピタ講座」 「ワインの常識がガラリと変わる本」「ヨーロッパワイン美食道中」などがある。


●バックナンバー
(1)ブルガリアワインの大要 (2)ブルガリアワインの歴史 | (3)ワインと料理の相性関係―I(4)ワインと料理の相性関係―II (5)ワインと料理の相性関係III | (6)ブルガリアのワイン産地(8)ワインと健康(9) 調味料によるマスキング(被覆)効果―I(10) 調味料によるマスキング(被覆)効果―II