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ワイン総合研究所   渡辺  正澄
 (10) 調味料によるマスキング(被覆)効果―II
     焼き餃子のチ−ズ添えとワインの相性

もう、20年以上の前だが、イタリアのトリノにあるヴェルモット工場を見学した。そのあとで、トリノ駅近くのレストランに寄り、ホウレンソウ、キノコ、ミンチ肉入りのラヴィオリのクリ−ム・ソ−ス添えと辛口白ワインとを味わった。ラヴィオリと餃子は、形や食材は違うが、小麦粉で練った皮に食材を包んでいるところが似ている。
これがヒントになって、ラヴィオリではなく、日本では簡単に手に入る生餃子に様々なチ−ズを溶かしてマスキングして、白・ロゼ−・赤などのワインとの相性を楽しむことにした。通常の餃子とワインの相性は、例の「ワインの“飲用適温”と“料理の相性”」表いえば、どちらも中間系である。そのわけは、ややタンニンの多い白は、餃子のラ−油の刺激味に合い易い。またワイン中の乳酸やタンニンは、チ−ズの乳酸や脂肪分と合わせ易い。
Dr 渡辺のブルガリアワインを10倍楽しむ法 (3)ワインと料理の相性関係―I } www.bulgaria-wine.jp

    相性を変えるワイン忍者のマスキングの術

しかし、この関係を破って、「焼き餃子のラ−油添え」に、さっぱり系(冷旨系)のモッッアレラ、中間系のカマンベ−ル、こってり系(温旨系)のミモレットやブル−・チ−ズでマスキング(被覆)して、さっぱり系白ワイン(冷旨系)、ややタンニンや乳酸のある中関係の白やロゼ、乳酸の多い樽熟辛口赤ワインや甘口赤ワイン(温旨系)などに合せることにした。これぞ、ワイン忍者のマスキング術では?

    焼き餃子のモッツアレラ添え (2人分)

「なに、これ!おいしい〜♪ワインに“ピッタリだ”・・・」これは、先日、拙宅で小ワイン・パ−テ−を催した時の楽しい会話。 この“ピッタリ”に関係した料理とワイ ンとは、“焼き餃子の上に電子レンジで溶かしたチ−ズ添えた料理と白ワインとの相性”だった。
この料理は、先ずフライパンにゴマ油を敷き、その上で市販の生餃子20個をまず焼く。フライパンに接している生餃子の下部の皮がいくらか焦げてきたら、辛口白ワインを生餃子の高さの半分程加えて、ふたをして弱火で蒸し焼きにする。この蒸した“焼き餃子”をフライパンから2枚の耐熱皿に10個ずつ移す。焼き餃子の上には、さっぱり味のモッツァレラ・チ−ズ(冷旨系)の適量を載せる。
このとき、モッツアレラ・チ−ズは、市販の粉状または薄切り状のも のを使う。これらが無い場合はモッツァレラの塊を冷蔵庫で、やや硬くしてから、ナイフで薄切りして、焼き餃子の上に適量載せる。 ここまでできたら、食べる直前まで放置しておいてもよい。いざ食べる直前に、モッツァレラを電子レンジで溶かして取り出だし、少量の大葉(またはバジル)の葉を散らす。さらにラ−油のタレを大さじ1杯ほど均等に少しずつ振りかける。このラ−油のタレの配合は、ほぼ、醤油(45%)+酢(45%)+小瓶入り辣油(ラー油:5%)と混ぜたもの。 この調理の最後に、ラ−油のタレを電子レンジから出してから加えるのは、加熱中に酢(酢酸)が揮発して飛ばないようにするためである。
クリ−ミ−なモッツアレラと辣油の風味は、一緒に味わう白ワインの渋味を、丁度うまくマスキングしてなめらかに包み込んでしまう。またこの料理の調理の始めに加えたワインの酸味と辣油の酸味(酢酸=冷旨系)と、一緒に味わうリンゴ酸(冷旨系)の多い白ワインとはよく合う。例えば、この “焼き餃子のモッツァレラ添え“には、ホワイト・マヴルッドがぴったりだ。もちろん、辛口白のバッカスやダニュ−ブ・ソヴィニヨン・ブランなどでも相性は良い。「ウマクテ、モッタネ〜ラ?(筆者故郷の方言に近い:オイシクテ、モッタイナイヨウナ?)

    焼き餃子のモッツアレラにピリ辛の甘口チリ−・ソ−スをかけると?

この、焼き餃子のモッツアレラ添えに、ピリ辛の甘口チリ−・ソ−スか、一味唐辛子の粉を、多めにかけると、突如として赤ワインのバッカスに合ってきた。このとき、穏やかな風味のモッツアレラ・チ−ズは、甘口チリ−・ソ−スや、一味唐辛子などでマスキングされ、風味はぴりっと豹変、心地よく後を引く刺激味が口中に急に広がってくる。まるでハイドン−交響曲、94番・「:恐愕: Surprise」のような、美しくておだやかな曲の中で突然の高音”サプライズ!のように、 ドキ! 合せるワインは、マヴルッドやカベルネ・ソ−ヴィニヨンなどが良く合う。ここでは、恐れ多くもモ−ツアルトではありません。愛しいモッツアレラだが、同じさっぱり系(冷旨系)のチ−ズなら、クリ−ム・チ−ズ、フロマ−ジュ・ブラン、フェタ・チ−ズなどでも、相性は、ニコニコ!ピタピタ!これらは皆、“ピタ・グラスの定理”に合った組合せとして登録しよう。

    焼き餃子のカマンベ−ル添え(2人分)

カマンベ−ル(中間系)は、モッツアレラ(冷旨系)より、乳酸や脂肪が多い。このチ−ズも、冷蔵庫で冷やして硬めにして、ナイフで薄切りにして使う。
ゴマ油を敷いたフライパンに生餃子20個を入れて、生餃子の下部が軽く褐色になったときに、素早く辛口白ワインを生餃子の皮の半分見えるところまで注ぎ、中温で蒸し焼きにする。最後にフライパンのふたを外して水分を飛ばす。辛口白ワインで蒸し煮することで、後で合せる辛口白ワインと合せ易くなる。ワインと料理の相性の原則で「似たものは似たものと相性が良い」にさせるためだ。フライパンの水分が飛んだら、適量の大きさの耐熱皿2個に、この焼き餃子を10個ずつ並べる。その上に薄切りしたカマンベ−ルの適量分を載せ、細かく刻ざんだパセリ−の葉を少量パラパラと加えてから電子レンジに入れて、チ−ズを溶かす。電子レンジから出したらラ−油を少々振ってできあがり。とろりと溶けたカマン・ベ−ルに柔らかくマスキングされた焼き餃子のラ−油風味の料理には、どんなワインが合うだろうか?様々なワインを試飲した結果、酵母や乳酸菌がワイン貯蔵中に自己消化してできる”ミネラル香“ とすばらしい樽熟香と酸味(乳酸)がある中間系白のゴ−ルデンリズム・シャルドネが最上の栄光に輝いた。この素晴らしいワインとの相性に感動していると、“Life is too short to drink bad wine” (International Enological Symposium eV.のモット−:人生は、まずいワインを飲んでいる暇はない:意訳)がよく理解できる。
このほかのワインで、やはり樽熟香と乳酸の多めなビラメルニック・ベルグ−ル、ヴィオニエも、なかなかよい。

    焼き餃子のカマンベ−ル添えに刺激的な調味料(温旨系)を加えると?

この料理にコショ−、チリ−・ソ−ス、或いはマスタ−ドを加えて行くと、辛口でミネラル香(還元的な新鮮な香り)があり、しかもタンニンのやや多いエドアルド・ロゼ−・デ・ノワ−ルにピタリ!
さらに、上記の刺激的な調味料を多く加えると?ナント、タンニン
の多い赤のバッカスのカベルネ・ソ−ヴィニ−ヨンやメルロ−にも、喜びの相性だ。

    焼き餃子のカマンベ−ル添えとスパ−クリングワインの相性

ところで、この料理は、スパ−クリングワインにも合うことを確かめた。スパ−クリングワインは、その炭酸ガスの爆発的な混和力で、口中の料理に直ぐ混ざって味覚の違和感を無くす。それゆえ、スパ−クリングワインは、すべての料理(冷旨系、中間系、温旨系 )にも合い易い。

    焼き餃子のミモレット添え(2人分)

赤ワインによく合うチ−ズには、脂肪や乳酸の多いミモレット、エメンタ−ル、パルメザン、ゴ−ダなどがある。ここではミモレットを使ってみよう。この焼き餃子のミモレット添えも、前記のモッツァレラやカマンベ−ルと、どうような方法で薄切りを使うことにした。
生餃子20個は、ゴマ油を敷いたフライパンで焼く。生餃子の下部がやや褐色になってきたら、この料理と飲むワ インと限りなく近い調理用赤ワインを生餃子の皮の半分が見えるところまで注ぎ、中温で蒸し焼きにする。最後にフライパンのふたを外して水分を飛ばす。
この辺の工程は、前記のカマンベ−ルと同じだが、ワインは白ではなく赤を用いたのは、後で合せる赤ワインとの相性を良くするためだ。フライパンの中の水分が飛んだのを確かめて、耐熱皿2個にワインの赤色で染まった焼き餃子を10個ずつ並べる。その上に薄切りしたカマンベ−ル適量と刻みパセリ−の葉を載せる。
これを、食べる直前に電子レンジにかけて、チ−ズを溶かす。レンジから出したら、ラ−油を適量振って出来あがり。丁度このとき溶けたチ−ズが柔らかい中にワインと合せよう。
この料理には、どんなワインが合うだろうか。この料理に、コショ−、チリ−・ソ−ス、または、マスタ−ドなどを、だんだん多く加えてゆくと、樽熟してタンニンや乳酸も多い赤ワインに合ってくる。例えば、マヴルッド、カベルネ・ソ−ヴィニヨン、メルロ−、ピノ・ノア−ル、ギャムザなど、その時の気分で合わせるのも楽しい。

    焼き餃子のブル−チ−ズ添え(2人分)

この料理の作り方は、上記の焼き餃子のミモレット添えと同じだが、耐熱皿に並べて入れた焼き餃子(10個)の上に、脂肪や乳酸が多く、刺激味の強いスティルトンの薄切りを適量、ブル−・ベリ−ジャムを大さじ1〜2杯、パセリのみじん切り少々を載せる。ブル−・ベリ−・ジャムの甘味は、スティルトンの強烈な刺激味を和らげる。
食べる直前に電子レンジにかけて、チ−ズとブル−・ベリ−・ジャムを溶かす。レンジから出したら、ラ−油を適量振って出来あがり。とろりと溶けたチ−ズが、温かく柔らかい中にワインとの相性を確かめる。赤ワインのバッカ スのカベルネ・ソ−ヴィニヨンやメルロ−、それにビニカ・マヴルッド、フォトグラフ・カベルネ・フランなどの名酒など・・・そのほか、ブルガリアの赤ワインと合せても、ピタピタと合ってくる。

焼き餃子のブル−チ−ズとブル−ベリ−ジャム添え(2人分)
ノ−ブル・マブルッド   

この料理の作り方は、上記の焼き餃子のブル−・チ−ズ添えとほとんど同じだが、ブル−ベリ−・ジャムの量を、大さじ3〜4杯位にする。つまり、耐熱皿に並べて入れた焼き餃子(10個)の上に、スティルトンの薄切りを適量、ブル−・ベリ−ジャムを。多めに大さじ3〜4杯、パセリのみじん切り少々を載せる。
食べる直前に電子レンジにかけて、上記と同様に、チ−ズとブル−ベリ−・ジャムを溶かす。レンジから出したら、ラ−油を適量振って出来あがり。とろりと溶けたチ−ズとジャムが、温かく柔らかい中に甘口デザ−トワイン、ザグレウス社の201 2年、夢のように甘いノ−ブル・マヴルッド(アルコ−ル14%、糖度約20%)と合わせてみた。この料理の酸と甘味が、このノ−ブル・ワインの酸と甘味にピッタリ調和している!華やかでエレガントな風味は、 シャンソンの”♪サントア〜マミ“♪のようにファンタスティッりク!この間、飲んべえ仲間と近所のカラオケ店で、愉快にこの歌を歌ったことが想いだされた。
(続く)


渡辺 正澄 プロフィール>

農学博士(京大)、ワイン総合研究所 代表取締役社長、ワインマスター研究会 代表。
山梨大学工学部応用化学科卒。ドイツ・スペイン国際学会等でワインと料理の相性や醸造学などの学術研究を発表。著名な日本のエノロジストの一人として評価される。
国際ワイン醸造経営協会日本理事、社団法人 日本ソムリエ協会名誉ソムリエ。
1978年、日本醸造協会技術賞 受賞。著書に「ワインと料理の相性ピタ・ピタ講座」 「ワインの常識がガラリと変わる本」「ヨーロッパワイン美食道中」などがある。

 
(1)ブルガリアワインの大要 (2)ブルガリアワインの歴史 | (3)ワインと料理の相性関係―I (4)ワインと料理の相性関係―II (5)ワインと料理の相性関係III | (6)ブルガリアのワイン産地(7)ブルガリアのぶどう品種(8)ワインと健康(9) 調味料によるマスキング(被覆)効果―I