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ワイン総合研究所   渡辺  正澄
 (8)ワインと健康

古代のラテン語には “ワインは、大人のミルクである”( Vinum lac senum )ということわざがある(1)。このことは古代のギリシャやロ−マ時代からワインは、大人にとって、子供のミルクのように栄養と健康によいのだという愉快な意味であろう。ここでは、「ワインと健康」のすばらしい関係について様々な話題をとりあげてみた。

    ワイン中の亜硫酸に対する誤解

最近、 筆者ら(2) は、 醸造産業新聞社発行の「酒販ニュ−ス」 に、「品質保持に不可欠な亜硫酸」について寄稿した。
それは近年、 自然派ワインと 称されるワインが人気になり、ワインの伝統的な酸化防止剤としての二酸化硫黄(亜硫酸・ SO2) を不要とする誤解を解くために、ドイツのガイセンハイム研究所の旧教授であった Prof.Dr.K.Wucherphennig の学会報告(3 )を翻訳して解説した。 その内容の大要は、「ワインに添加される二酸化硫黄はワインの品質を向上させるだけでなく、 飲用した場合は体内で健康上、有益な含硫アミノ酸であるメチオニン、システィン、シスタインなど、 人体をフレシュにさせる栄養素になった後で、安全な酸化物となり、 便や尿と 共に人体外に排泄される」 ことを紹介した。

    ドイツと日本の病院でのワイン持込みの違い

ドイツではワインを病院で入院中に飲んでもよいが、日本では禁止されている。
ドイツの病院に入院していたとき、お見舞いには、 なんと、 必ずワインと花をもってきてくれた。ワインを病室で飲み過ぎずに、ごく当たり前に晩酌できることは幸せなことであった。残ったワインを当直の先生に少々 あげたら大喜び。翌日からは、すごく お愛がよくなった。 ところが日本の病院では入院した場合、「酒を持ちこんだら、大変なことになる」と 、予め婦長さんから、きつく申し渡された。 その原因は、ワイン文化の違いからきているのだろうか。ドイツでは、ワインを飲む時は、マナ−を守って人に迷惑をかけない。飲んで喧嘩でもしたら、即刻退院か罰金をとられるだろう。 ワインを薬と信じ、 ドイツの病院では、静かに陽気な気分で健康的に飲める のだ。

    ヨーロッパの乾杯の意味

ところで親しい人達と、 酒類を飲むときの挨拶の「乾杯!」 の言葉は、 日本語、中国語、韓国語では、杯を乾かす(飲み干す)ことを指している。 ヨーロッパの乾杯は、「あなたの健康のために」と言う意味になる。 たとえば、 ブルガリア語(ナズドラベ)、ギリシャ語(スチンヤマス)、 イタリア語(アッラ サル−テ)、 ドイツ語(ツ−ム・ヴォ−ル)、 フランス語(ア ヴォ−トル サンテ)、 スペイン語(サル−)、ポルトガル語(ヴィヴァ)英語(チア−ズなどがある。 これらの外国語を話す外人の訪日の増加で、 レストランや居酒屋では、 ワインを提供する場合も多くなる だろう 。 そのような場合に、 訪日直後の彼らが最初に喜ぶオモテナシの言葉は、彼らの母国の“乾杯用語” になるかも?

    ワインと健康の歴史

ワインが健康によいことは、 すでに古代から認められていた。 ワインは人類の歴史で最も古い飲物の一つであり、 陽気な飲物として、さらに薬用としても利用されてきた。ワインが誕生した8千年前のペルシャ、7千年前のブルガリア、5千年前のエジプト、4千年前から3千年前頃のギリシャ、 さらに2千年前からのロ−マ時代を通じてワインは万能薬としても知られてきた。古代ではワインの薬効は、人々の経験による口伝えが多かった。最近では、 ぶどうの果皮、果粒、葉、 根などの薬効も明らかになってきた。 ブルガリア、ギリシャ、トルコなどでは、 古代から脚のむくみを取るのに良いという言い伝えで、ぶどうの葉を煎じて飲んだり、また料理にも使っ てきている。
紀元前400年頃にギリシャの医学者であったヒポクラテスは、ワインを睡眠薬、強壮剤、鎮静剤、頭痛薬、精神安定薬、鎮痛薬、心臓循環機能障害の治療薬、眼科薬、胃腸薬、 利尿剤、外傷用などの薬効について記録に残している。古代ロ−マでは、 胃腸疾患や出血の際には、タンニンの多い赤ワインが、また食欲不振には、古いワインが用いられた。その他にも湿布薬、ぬり薬、マッサ−ジ薬として、また重度の外傷の治療薬としても利用された。ドイツ、ハイデルベルグの地方健康保険組合では、 1892 年まで様々な病気の医学的治療薬としてワインの処方を認めていた。 中世では、ワイン中の酸やポリフェノ−ルが、恐ろしいペスト (黒死病)にも効果があることが分かった。
ペストの流行時期に、有名な酒飲みのドイツの”ヘル オ-グスチン“は、毎日浴びるように辛口ワインを飲んでいた。 その彼は、なんと、ペストに全く感染しなかった。 産業革命後、 様々な酒類によるアルコ−ル中毒が増えて、それによる精神障害が問題になった。一方、 1960 年代からワインを医学的見地から適度な飲酒と健康の関係について徹底した研究がなされ、 適量のワインが健康を向上させること が医学的に明らかになってきた。 

    フレンチ・パラドックス

1991 年に、ボルド−生まれでフランスの国立医療研究所の科学者セルジュ−ル・ ルノ−氏が、アメリカの情報番組 CBS ニュ−スで、「フランス人は、脂肪の多い食事をしているにもかかわらず、アメリカやその他のヨ−ロッパ諸国より心臓疾患が少ないのは、 ポリフェノ−ルの多い赤ワインをよく飲んでいるからである」と説明した。この「フレンチ・パラドックス」と呼ばれるようになったニュ−スで、アメリカでは爆発的な赤ワインブ−ムがおこり、またたく間に日本を含む世界中に赤ワインブ−ムが広がった。これが契機となり、特に循環器系に対するワインの効果に関する研究は著しく進んだ。また、癌や痴呆症、糖尿病、骨粗しょう症などに対するワインの効力についても、世界中で研究されている。さらに白ワインの健康効果についても、ドイツでは研究が進んでいる。適度な白ワインが健康促進に役立つことが明らかにされた。 また白ワインには抗菌や整腸作用があり、 特に食中毒で有名なサルモネラ菌や大腸菌に高い抗菌力を発揮する ことが分かった。つまり 生ものや魚介類を食べる時は白ワインが最適。「生ガキにシャブリ」と言われるのも、料理の相性の良さ だけではない。また、 樽熟した新鮮な高級辛口 白ワインには、 ミネラル分(ジエチル・ ジサルフアイドを多く含んでおり 、 料理を新鮮にするだけでなく 、 利尿作用にも効果があり 体の新陳代謝も活発になることが分かった。
なお赤・白ワインとも、程度の差はあるが、ブドウ成分の殆どをワインの中に含むので、多くのミネラル、ビタミン、ポリフェノールが含まれている。そのため、体内の抗酸化作用、血圧降下、殺菌作用、抗ガン作用などの詳細な研究も報告されている。 食品に含まれているビタミン、ミネラル、ポリフェノ−ル等は、通常人体に 30?40%しか吸収されないが、ワイン中の成分はほぼ 100%人体に吸収される。 (4)

    ワインは糖尿病患者の血糖値を下げる

イスラエルの Negev 大学の研究によれば、糖尿病患者は、ワインの飲用によって血糖値が高いほど低下することと、さらに毎日、少量の白か赤ワインの飲用によって血糖値は低下して病気へのリスクが減少することを報告している。
また、ドイツワインアカデミ -の Dr. Claudia Steinhammer は、糖尿病患者のように血糖値が高いと、目、腎臓、神経、心臓や心筋梗塞などの疾患に影響こすことを述べている。またこれまでの病理学的研究で、規則正しい節度あるワインの飲用は、2型糖尿病*の症状リスクを著しく低下させる ことと、すでに2型糖尿病に罹病していても毎日少量のワインの消費は、 心筋梗塞の危険性は減少すること などについても報告している。(* 2型糖尿病と は、インスリン分泌が低下する糖尿病である。 1型糖尿病は、インスリン分泌がほぼゼロになるタイプで自己免疫疾患やウイルス感染で発病するが、圧倒的に多いのは2型糖尿病である。 (5)

    レスベラトロールが糖尿病を改善!?

これまでもワイン中ノポリフェノ−ルのグル−プであるレスベラトロールの糖尿病防止に対する効果が示唆されていたが、糖尿病を発症しているマウスの頭に「レスベラトロール」 を注入し、その後高脂肪食を与え続けた。 5 週間後、「レスベラトロール」を注入したマウスは改善が見られた。 ただし、現在、この作用はマウスの脳に注入した場合にのみ認められている。この研究は、米国心臓協会(AHA)、米国立衛生研究所(NIH)および米国糖尿病協会(ADA)の支援により実施され、研究結果は医学誌「Endocrinology(内分泌学)」オンライン版に掲載された。 (6)

    動脈硬化・ガン予防

ポリ フェノールは動脈硬化やガンの予防になる。動脈硬化は、血液中の低コレステロ−ルと結合して酸化し、白血球のマクロファージーにより血管の壁がふくれあがって起こる。 また、ガンは酸化酵素がDNAに触れ、DNAを傷つけることが原因となる。ポリフェノ−ルは酸化しやすい物質で、体内に入って活性酸素と素早く結合するために、動脈硬化やガンの原因となる悪玉 活性酸を消滅させてしまう。さらにワインやぶどう中のレスベラトロールに殺ガン物質が含まれ、現在ガン治療薬として研究開発が進められている。またワインの醗酵過程で レスベラトロールが増加して、抗ガン作用に効果がある。 (6)

    アルツハイマ−の予防

ワインの中には数多くのミネラルが含まれている。特にマグネシウム、カリウムが多い。マグネシウムは脳細胞の活性化に役立ち、アルツハイマー予防に効果が期待される。アルツハイマ−は、 体内にアルミニウムが入ることが原因との説がある。マグネシウムとカルシウムが体内にあると、アルミニウムが入らないと言われる。ワインとチーズとの相乗効果が期待される。またマクネシュウムは血液をサラサラにする。 さらに、毎日グラスで3〜4杯(375 mL 程度) 飲んでいる人は飲まない人よりアルツハイマー症(痴呆症)が5分の1の発症と言われている。

    高血圧の予防  

ワインに多く含まれているカリウムは体内のナトリウムと結合して、塩分を減少させ、高血圧予防に役立つ。通 常の血圧に対して、ワインを少量飲むと 10 程度血圧が低下する。多少、多く飲んでも血圧は上がることはない。血圧は下がっていく。程良くワインを飲む習慣をつけると、血圧の 常値はワインを飲んだ時よりも、さらに低下した血圧を維持できる。 さらに散歩など軽い運動と合わせての健康維持が勧められる。 (7)

    ワインはほどよく飲んで健康維持

健康効果があるとはいえ、飲み過ぎには注意が必要。 一日当りの適量は、約 1 本の半量(375 mL) で充分である。赤ワインのポリフェノールは、一番多い野菜の約 20 倍以上も含まれているので、大量に飲む必要はない。また高級ワインは多くのポフェノールの合体となり、更に効果が倍加されるので、高級ワインを程良く少しずつ飲むのが理想的である。

    二日酔いの原因と対策

楽しいお酒はどんどん喉を通ってしまい気が付くと酔っ払い状態になる 。ひとたび度をすごしてしまうと 悪酔いや二日酔いに襲われた経験のある方は多いだろう。 耐えきれない程の頭痛、そして吐き気といった特有の症状に悩まされることもある。二日酔い、 つまり悪酔いの原因はアセトアルデヒドが原因。アセトアルデヒドは、体内に入ったアルコールの分解で生まれる。ワインを飲み過ぎたり、肝臓が疲れていると、アセトアルデヒドを分解する作用が遅れ、血液の中に入り込み体内をかけめぐる。
すると、脳で血管を刺激し、頭痛や悪酔いという症状を引き起こすこと になる。
ところで、アセトアルデヒド(胃がん発生の原因物質でもある )は、ワイン中に二酸化硫黄が含有されていると、二日酔いをかなり防ぐ。また、ぶどう糖は肝臓で生成されるアセトアルデヒドを減少させる。つまり肝臓でアルコールを分解する時に、ブドウ糖が必要である。酸化したワインには、アセトアルデヒドが多く、食事抜きで飲用すると二日酔いになり易い。重い二日酔いには、病院でのブドウ糖液の点滴で速やかに回復する 。 簡単にできる方法は、砂糖やぶどう糖などを水に薄めて飲むとよい。 また、ゆっくりと時間をかけてワインを飲むと、肝臓への負担は緩やかになる。 砂糖は、小腸の消化酵素でブドウ糖と果糖に分解されて体内に吸収される。
なお、 二日酔いの治し方にはいろいろある。よく知られているのは、スポーツドリンクを飲むこと。 しじみの味噌汁など、二日酔いを治すといわれている食べ物を摂取すること。 これらはアルコール摂取によって失われた水分やミネラルなどの栄養を補給するためである。
水分補給で人体が一度にとれる水分の量は250 ml 程度なので、 30 分おき位の摂取が効果的である。 しじみに多く含まれる オルニチンは、 肝臓の機能を改善する。また、 胸やけや胃もたれがひどい二日酔いには胃腸薬や重曹を飲むと症状が軽くなる。さらに、二日酔いを治すのに効果的といわれる砂糖(ブドウ糖)を、加えたコ−ヒ−が効く。 コ−ヒ−に含まれるカフェインは、 アルコールの分解を助ける効果がある。 また、カフェインには利尿作用があり、アセトアルデヒドを体外に排泄する作用もある。
一方、 二日酔いには緑茶を飲むのもよい。緑茶には胃の粘膜を保護するカテキン、アセトアルデヒドの分解を促進するビタミン C、利尿作用のあるタンニンなどが含まれている。二日酔いを治すには摂取したい飲み物の一つである。

    誤った二日酔い対策

飲んだ後でジョギングなどの激しい運動をするのは、心臓に大きな負担をかけるので危険だ。ときには心臓麻痺をおこすかもしれない。飲酒直後の入浴は厳禁!翌朝でもぬるめのお風呂やシャワーにとどめておく方がよい。 迎え酒はアルコールによって一時的に痛みや不快感を取り除くだけ。アルコール依存症になってしまう!
迎え酒でニ日酔いが治る、 と いう説があるが、アルコールで弱った肝臓や胃にさらにアルコ−ルを摂取すれば、ますます肝機能が低下してアセトアルデヒドは体内に残ったままとなる。迎え酒をすると、体内に残っているワインが神経を麻痺させるだけで、症状が緩和されているのではない。二日酔いを治すには、肝機能が回復する まで飲酒しないことである。また、サウナや運動で汗をかくとアルコ−ルは体内から出てしまうが、二日酔いを治すには水分が必要。運動やサウナは、 たくさんの汗をかいて水分を体から余計に出してしまうので逆効果となる。 (7)

    二日酔いの予防

それには普段の食事に注意して肝臓の機能を高めておくこと。肝機能を高めておくには、良質のタンパク質をとるのが一番よい。緑黄色野菜など、ビタミン・アミノ酸系のタウリン・システインを含む食品類を摂る。タウリンはタンパク質の一種、カキ・イカ・タコなどに多く含まれている。システインは、 枝豆、 ゴマ・うずらの卵・そば・キウイなどにも多く含まれている。 (8 )

    二日酔い予防の料理

生カキ、帆立のバター焼き、カキフライ、帆立と大根のサラダ、あさりの酒蒸し、枝豆、イカの刺身、ほうれん草のゴマあえ、タコの刺身、焼き鳥(レバー)、納豆、冷奴、マグロの山かけ、揚げ出し豆腐、海老のチリソース、焼き鳥、トマトと魚介のマリネ、焼き ホッケ、カマンベ−ルチ−ズ、 などなど。ただし、一度に全部を食べるのは、 カロリーの取り過ぎで太る のでやめておく 。糖尿病などの原因にもなりかねない。また、翌朝の疲労感を取り除くには、 糖分の多い果物、ハチミツ、ジャムを取るのが効果的である 。 なお、 寝覚めの甘いフル−ツは二日酔いを防ぐ。 (9 )

最後に、 読者の皆様が、よいワインで楽しく健康な人生を過ごされることをお祈り申し上げます。 ♪

   

文献
1: 田中秀央、落合太郎:ギリシャ・ラテン引用語辞典、第7刷序、岩波書店、 1963.
2: 渡辺正澄、島津善美、藤原正雄: 酒販ニュ−ス: 2015.9.21 号第 2 集、ワイン特集(P.66〜67) , 2015.
3:K.Wucherphennig:Schwefelige Sauereim Wein: Geschichte, Toxzitat und Entfernung,6 th
 
International Enological Symposium,28-30,April,Mainz,Germany, 1981. 4:
4: www.healthassist.net/food/french/french-paradox.shtml
5: Der Deutsche WeinbauDer,25.1.2008.
6: Resveratrol at 21:06| PermalinkComments(1)TrackBack(1)
7: www.二日酔い.biz/naosikata.html
8: www.wakasanohimitsu.jp
9:shutenou461 at 20:35, Comments(0) , TrackBack(0) , お酒の飲み方.
10: : 渡辺正澄: The Drinks, ワインと健康、 Nr.9,46-48, 1971.


<渡辺 正澄 プロフィール>

農学博士(京大)、ワイン総合研究所 代表取締役社長、ワインマスター研究会 代表。
山梨大学工学部応用化学科卒。ドイツ・スペイン国際学会等でワインと料理の相性や醸造学などの学術研究を発表。著名な日本のエノロジストの一人として評価される。
国際ワイン醸造経営協会日本理事、社団法人 日本ソムリエ協会名誉ソムリエ。
1978年、日本醸造協会技術賞 受賞。著書に「ワインと料理の相性ピタ・ピタ講座」 「ワインの常識がガラリと変わる本」「ヨーロッパワイン美食道中」などがある。


 
(1)ブルガリアワインの大要 (2)ブルガリアワインの歴史 | (3)ワインと料理の相性関係―I (4)ワインと料理の相性関係―II (5)ワインと料理の相性関係III | (6)ブルガリアのワイン産地(7)ブルガリアのぶどう品種(9) 調味料によるマスキング(被覆)効果―I(10) 調味料によるマスキング(被覆)効果―II