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ワイン総合研究所   渡辺  正澄
 

 大分前の話だが、柏市のデパ−−ト内にあったホテル・オ−クラのレストランでホタテのカルパッチョを味わった。その料理は、まず、新鮮なホタテの貝柱をスライスして皿に円形に並べ、ソースとしてレモン汁、タンニン多めの白ワイン少々、アサツキのみじん切り、グリ−ン・ペッパ−、塩、オリ-ブ油などを混ぜて置き、食べる直前にホタテにかける。なんという美味! これに合わせたワインは、アルコ−ル発酵の後で起こるマロラクチック発酵でワイン中に乳酸が多く、それにややタンニンの多い中間系のロゼ・ワイン。このカルパッチョとロゼ・ワインとの見事なハ−モニ−は、「待っていました!」の期待の2倍以上の美味に変わった。まったく嬉し涙が流れそうだった。

 ホタテの化学成分中には、乳酸やコハク酸(温旨系)などの酸があるが、ソース中にレモン汁(冷旨系)を含ませることにより、この料理は「料理とワインの相性表」で言えば、温旨系と冷旨系の食材が、ほぼ半々混ざった中間系となる。当然、中間系のロゼ−にピッタリだったわけである。それにホタテの甘味は、ワインのタンニンの苦味を隠す効果もある。
 もし、この料理で、ワイン中のタンニンとの相性もよいオリ−ブ油を減らして、逆にレモン汁を増やしていくと、このロゼ−との相性はだんだん悪くなっただろう。(文献:渡辺正澄・藤原正雄:新料理とワインの相性、「料理とワイン」、暮らしの設計、No.201,中央公論社、1991)。(図参照)

   カルパッチョとは

  ところで、福岡のフグ料理の一流店では、伊万里焼の大皿に、てっさ(薄切りにしたフグの刺身)を美しく並べて盛り付ける。並べ方は、カルパッチョ風だが、このフグは、つけ汁用小皿の中に酢・醤油、スダチ、紅葉おろし、それに福岡特産の細身のコウトウネギを刻んで加えた “たれ”につけてから食べる。(渡辺、藤原:ワインと料理の相性診断。講談社)
 
もし、最初から“てっさ”に、この“たれ”に加えてオリ−ブ油をパラリと“振りかけたら”、フグのカルパッチョ風と呼べないこともないが、料亭では、やはり和風の“たれ”につけて、和気あいあいで賞味する方が気分的には落ちつくような気がする。
 もともと、カルパッチョなる料理名は、新鮮な赤い牛肉のヒレ肉のスライスに、白っぽいマヨネ−ズにマスタ−ドを少々混ぜたソ−スを網状にかけたり、パルメザン・チ−ズを振りかけたベネツイアの前菜料理。ベネチアのハリ−ズ・バ−のチプリア−ニが、1950〜1960年代に考案したといわれるが、ルネサンス期の画家で、赤と白の対照による洗練された作品が多いカルパッチョの名前に因んでいるとの指摘や、そのほかにも諸説がある。(文献 difference.shining-eternally.com) この“カルパッチョ”の名前が”オモカッチョ“だったら、食べる前から、オモ(重)カッチョ!な気分で食欲がさえないかもしれない。
 
現在、和風のカルパッチョでは、新鮮な魚介類の刺身に香味野菜や果物を皿に載せて、塩、・コショウ−、レモン汁、オレンジ汁、ニンニク、ショウガ、生クリ−ム、ヨーグルト、梅肉、醤油、昆布茶、果実由来のヴィネガ−、オり−ブ油、生の鶏卵、などを適切に選んで混ぜたソ−スを、新鮮な薄切りした刺身や、場合によっては、マリネした魚介にかけて味付けした料理。それに風味を添える大葉、バジル、クレソン、きゅうり、トマト、パプリカ、ケイパ−などが添えられる。そのため、カルパッチョと呼ばれる料理は、“創作”も含めて限りなく多い。
 今日も、明日も、どこかで新しくて素晴らしいカルパッチョが生まれていることだろう。 ここでは、ホタテのカルパッチョとソ−スの一端について申し上げる。

   ホタテのカルパッチョ

 青森の港近くのカラオケ店で、三木たかし作曲の「津軽海峡冬景色」を歌っていた頃だから、もうだいぶ昔の話になる。当時、青森市内での「ワイン鑑定一座(藤原と渡辺)」の講演会が終わった後で、青森市内の親切な鮨屋さんにワインを持ち込んでホタテとワインの相性実験を行った。このホタテは津軽陸奥湾の塩水濃度で育った一級品だとのこと。この刺身になんの調味料もつけずに試に味わうと、ほのかな甘味、旨味、酸味があった。そこでとりあえず、辛口白のミュスカデ−と合せた。ところが思ったほど相性はよくない。ホタテの刺身をできるだけ薄くすると、レモン汁が刺身に浸透して、ミュスカデ−と合ってくる(マスキング効果=被覆効果)が、一般にホタテの様な貝類には、乳酸やコハク酸(温旨系)やグリコ−ゲンのような甘味が多いので、上記のように、マスキングをしないで味わうと、苦っぽくなることが分かった。(池田静徳:「魚介類の微量成分」、恒星社厚生閣版、1981)
なお、ミュスカデ−は、辛口でリンゴ酸(冷旨系)が多いので、イカやタコ(冷旨系)の鮨などには合わせ易いが、やや厚きりのホタテの刺身では、合わせにくい。
そこで、ほたて本来の成分を生かした合せ方として(1)ホタテの温旨系有機酸である乳酸やコハク酸に対して、白ワイン中に温旨系有機酸の乳酸のあるもの同士、(2)ホタテの乳酸やコハク酸と相性のよいタンニン(温旨系)多めのワイン、(3)ホタテの甘味とワインの甘味がほぼ一致している三つのタイプの白ワインを選んで、料理中の相性の中心となる成分(乳酸=タンニン、乳酸=乳酸、甘味=甘味)とそれを補足する調味料による料理とワインの相性実験を行った。

 なお料理の調味料とワインの成分で相性のよいもの同士として、料理中のオリ-ブ油とワイン中のタンニン。ワイン中の乳酸(温旨系)と料理中のヨーグルド(乳酸)。また料理中のニンニク(温旨系)とワイン中のタンニン(温旨系)。さらにカルパッチョらしい料理のアクセントにもなるバジルの香りとワインの香り、料理の甘味のオレンジとワインの甘味。 このような点に考慮して、下記のレシピ−による相性の研究をした。

     ホタテの貝柱の3種類のカルパッチョと、ワインの相性

(1) ホタテの貝柱中の乳酸 =ワイン中のタンニンと合せる方法
ホタテの貝柱の刺身(乳酸やコハク酸が多い)+ 塩・コショ−(少々) + レモン汁(適量)+オリ-ブ油(適量)+バジル(大葉)のカルパッチッチョ。
これに合うワインは、タンニンが多めの2012ホワイト・マヴルッド、2011サンイリア・シャルドネ、 2011ラボアジ・シャルドネ、ユニ−ク・シャルドネ、エドアルド・ロゼ・デ・ノア−ルなど。


(2) ホタテの貝柱の乳酸)=ワイン中の乳酸と合せる方法
ホタテの貝柱の刺身(乳酸やコハク酸が多い)+ 塩・コショ− + レモン汁+ニンニク+オリ-ブ油+乳酸の多いヨ−グルド(少々)+バジル(大葉)のカルパッチョ。      
これに合うワインは、乳酸のある2012ビラ・メルニック・ベルグ−レが合う。このワインは、アルコ−ル樽発酵を樽中で行うので、樽の香りと、ぶどうと樽由来のタンニンが多く、アルコ−ル発酵の後で行うマロラクチック発酵によってワイン中に乳酸が多くなる。

(3) ホタテの甘味 = ワイン中の甘味と合せる方法
ホタテの刺身(甘味)+ 塩・コショ− + レモン汁+オレンジのスライス+オリ-ブ油+バジル(大葉)のカルパッチョ。
これに合うワインは甘口白ワイン。 例えば2011サン・イリヤ・ムスカット・オトネル、 2011イーエム・ムスカ−ト・オトネル、2011ユニ−ク・ムスカット・オトネルなどである。


 


以上の様に、乳酸や甘味のあるホタテのカルパッチョには、三つの白ワインのタイプによる相性を楽しむことができる。それぞれが優雅な味わい! ホ−♪ と、ため息がでる。ワインと料理の相性が、“哀傷”にならずに済んだ実験であった。



バックナンバー 
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